商品を購入する方はこちら

【発酵思想 Vol.7】主体性と受動性のはざま

こんにちは。
前回の発酵思想では、旅と発酵について綴りました。

今回は、主体的に生きることと受動的に生きることについて綴ります。

【発酵思想 Vol.6】旅と発酵

主体性がない

学校や会社でこの「主体性がない」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。

主体性とは、コトバンクによると「自分の意志・判断で行動しようとする態度」らしいです。

つまり、主体性がない人というのは、自分の意志や判断で行動しない人のことで、近現代社会ではそのような人を見下し否定する態度が取られます。

この主体性は、個人主義の流れの中で広がった概念ではないでしょうか。

個が大切にされる時代という言葉は耳当たりが良く感じられますが、「自分(自我)を大切にして”主体的”に意思決定した結果は全て自己責任でお願いします」という意味が内包されているように感じられます。

僕は、主体性を認める社会も必要だと思いますが、主体性がない生き方も認める社会も重要だと思います。

しかし、それは単に親が決めたからと言い訳をする人生ではなく、受動的な人生を主体的に生きるという意味においての主体性がない生き方です。

噛み砕いて説明しますと、人生というのは長い川のようなものだと思います。

生まれ落ちてから死ぬまで、時間と共に上流から下流へと流れていきます。

時に濁流になったり、時に滑らかになったり、時に滝があったり、時に湖に流れ着いたり。

人生という川の流れに身を任せて流れていくというのが、受動的な人生です。

その流れている中で様々な選択肢が立ち現れてきて、その選択肢を納得して掴むというのが主体的に生きるという意味です。

僕は、まさに人生は受動的なものだと思っています。

周りの人たちからは、主体性のある人だと思われていますが、自分の意志や判断で行動しているのではなく、なるようにしてなった人生の流れに身を任せ、日々の選択を流れながら掴んでる感覚です。

そのため、夢も目標も僕にはありません。

夢を持ったり、目標を持つというのは欲を帯びた自己が必要で、それを達成するために川の流れに争うことも必要になるので、夢も目標も捨て、なるようにしかならない人生に身を委ねました。

ただ、志は持っています。

この志というのは、夢や目標とは違い、なるようにしかならない人生に身を委ねた先に見えてくる使命であり天命です。

この志は命と同じくらい尊いものだと思いますし、選択肢を納得して掴む時の指針になるのが志です。

主体的ではなく受動的な生き方

仏教には、他力本願という言葉があります。

この他力本願の本来の意味は、阿弥陀仏の本願に頼って成仏することです。

まさに、本願が先ほど述べた志に通じるものだと思います。

この自己(我欲)を捨てた本願は、社会や人類の幸せを心から願う志です。

その志に従い、なるようになる人生に身を捧げた瞬間にとても気持ちが楽になり心地よく生かされることができます。

笑ってしまうぐらい操られているかのように感じられ、どれだけ右の選択肢に進みたいと思っても進めず大きな壁が何度も立ちはだかり、諦めて左の選択肢の道に進むとスッと物事が進むという具合に、最初から全てが決まってたかのように物事が進んでいくことを客観視できた瞬間に僕は思わず笑ってしまいました。

そんな客観視が小さいながら大きな覚りに感じ、それ以降人生の流れに争わないで生かされていこうと腑に落ちました。

自分という小さな主体ではなく、神なのか仏なのか自然なのかは分かりませんが、大きな存在の主体の導きの中で、その導きを受動しながら生かされていくことで心強く幸せな毎日を送ることができていると実感しています。

受動的な生き方と微生物

この受動的な生き方というのはとても微生物の生き方ではないかなと思います。

微生物も様々な要因に適応しながら生きています。

適応とはつまり、環境に流されるということです。

9月にモバイルハウスで全国を回る「発酵の道」の旅の中で、鳥取県智頭町にあるタルマーリーというパン屋に行きました。

タルマーリーでは、天然の酵母菌を自家採取してパンやビールを醸しています。

その天然酵母菌の採取している様子を見せていただき、お話を聞きました。

印象的だったのは、農薬散布後や運動会後だと茶色や黒のカビが発生してしまい、綺麗な麹菌が採れないということでした。

菌というのは、自分の生きている環境に依存していて、その環境変化にすぐに影響されてしまうということを学び、受動的な生き方だなと痛感しました。

微生物もまた一生という時間や環境の流れのなかで、自分の役割をまっとうするために流され流され生かされています。

発酵的生き方とは、夢や目標という我欲を捨て、導かれる人生の方向に流されながら志(使命)を見つけ、その志をまっとうするために日々生かされていくという生き方だと思います。

言葉では簡単に表現できても、実践はとても難しいです。

僕自身、まだまだ修行中ですし、気がつくと我欲が表面に出てしまい、苦しい自分に気がつき、我欲を捨てるという繰り返しの途上です。

なにか違うな、苦しいな。と感じた時に、一旦その問題を自分よりも大きな存在の視点で客観的に俯瞰してみると、苦しい気持ちが少しは楽になると思いますし、方向転換を促されていることに気がつくかもしれません。

千葉恵介

1996年岐阜県生まれ。思想家。
感謝経済という見返りを求めない贈与の循環を滑らかにする潤滑油として「ありがとう」を用いた経済を提唱し、共感する人たちと共に醸している。
また、感謝で繋がる恩贈りSNSであるmusubiを開発し、貨幣に頼らない経済を模索中。

今までの「発酵思想」
【発酵思想 vol.0】感謝経済を提唱する思想家・千葉恵介とは? 【発酵思想 Vol.1】発酵から何を学び、次世代に何を残すことができるのか? 【発酵思想 Vol.2】感謝経済を創るのではなく、なぜ醸すなのか? 【発酵思想 Vol.3】〜自分と他者の境界線〜自分を構成してる物は何か? 【発酵思想 Vol.4】“あわい”の哲学-「茶室」と「発酵」の共通性とは?- 【発酵思想 Vol.5】“あわい”の哲学 -時は無駄なり。無駄が人生を豊かにする- 【発酵思想 Vol.6】旅と発酵

Follow me!

PAGE TOP