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【発酵思想 Vol.6】旅と発酵

こんにちは。
前回の発酵思想では、時は無駄なりについて綴りました。

今回は、旅と発酵について綴ります。

【発酵思想 Vol.5】“あわい”の哲学 -時は無駄なり。無駄が人生を豊かにする-

僕は、今まで36各国を旅してきました。

メインはヨーロッパで25カ国訪れました。大学2年生の夏休みに友人と二人でヨーロッパ22カ国を着物で回るというYouTuber企画を行いました。

ある日、ビフォア・サンライズというヨーロッパを鉄道で旅する中で恋に落ちるというロマンス映画をレンタルして家で見ていたところ、ふとヨーロッパは鉄道で旅できるということを知りました。

当時僕は、19歳で10代最後に何か武勇伝を残したいなという気持ちがあったことと、水曜どうでしょうというテレビ番組でヨーロッパをレンタカーで回るという企画を見ていたこともつながり、友人にLINEをしたところ、5分でヨーロッパに旅することが決まりました。

ヨーロッパを鉄道で旅する中で、大陸でつながっている国々でさえも建築も文化も料理の味も言語も全く異なるのではなく、グラデーション的に徐々に変化していることに気がつきました。

そうした変化に気がつきやすくなるのが旅ならではだと思います。

第六感を引き出す

旅は、日常の”ケ”から非日常の”ハレ”に転換する装置です。

日本から旅立ち、異国の空港に降り立った瞬間から、見える景色も聞こえる言葉も匂いも温度も湿度も全てが違います。

そのため、全ての神経が研ぎ澄まされ、五感を使いながらその土地に適用しようと無意識に身体が働きます。

そうすると、第六感として直感、インスピレーションが湧いてきます。

別の言い方をすれば、アンテナが立ちやすくなり、今まで見えなかった景色がみえ、現地の人にはわからない微細な変化や常識に気がつきやすくなります。

旅は、そうした第六感を引き出す役割を果たし、僕らの心のぬか床に様々なインスピレーションが素材として漬けられていきます。

そのインスピレーションを寝かし、新しい素材をまた漬けていくという作業を旅先で何度もしていきます。

僕が提唱する感謝経済もまた、今まで寝かされていた素材が旅先で醸され熟成して立ち現れた言葉です。

旅をするというのは、予想外なことが当たり前に起きる場であり、そうしたアクシデントが想像以上に面白い味わいを引き出してくれるスパイスとして働きます。

第六感を引き出しやすい環境に必然的にしてくれ、自分の思考が発酵しやすくなる状態に誘ってくれるのが旅なのではないでしょうか。

偶然的な必然性

旅先では、思いがけない出会いに遭遇することがよくあります。

この経験は、僕だけではないと思います。

冒頭にお話ししたヨーロッパの旅の中で面白い出来事がありました。

当時僕は、旅をしながら働くというデジタルノマドになりたいという想いがありました。

YouTuberであれば、旅をしながら生きていけるかもしれないという考えもあり、素人ながら動画を編集し、YouTubeチャンネルで動画を公開していましたが、動画編集は自分がやりたいことではないという発見をするというトライアンドエラーを繰り返していました。

話を戻しますが、スロバキアの首都のブラチスラバという街に行きました。

夕ご飯を食べに旧市街地を着物姿で歩いていると、お店の中にいた日本人の老夫婦に呼び止められました。

これも何かのご縁と思い、そのお店で一緒に食事をすることにしました。

話をしていると、女性の方は日本人の初代バックパッカー世代で東南アジアを中心に旅をされていた方で、男性の方は、冷戦時代にシベリア鉄道で東ドイツに旅をして共産主義の社会を目の当たりにした方でした。

その当時の話では、アメリカに家を持ちながら、一年に1週間だけ日本に帰り仕事をして、あとはヨーロッパを中心に世界中を旅して生きているというまさにデジタルノマドの先輩と出会ったのです。

また、その男性は、世界中の人が知っていて見たことのある製品を開発した会社の社長でもあり、当時の僕にとって起業家の先輩でもありました。

そんな方と、結局6時間もの間お話しすることができ、旅先でしか聞けない内容だけでなく、6時間という長い時間多くの学びを得る機会になりました。

こうした出会い方ができるのは、旅というハレの装置の力ではないかと思い知らされた出来事でした。

旅と発酵

旅をするというのは、私というぬか床に新しい素材を入れたり、新しい菌が無意識に加わったりすることで、想像をはるかに超えた思考や自分を醸してくれることだと思います。

だからと言って、旅をすれば新しい自分になれる、自分探しのために旅に行くことをオススメしている訳ではありません。

ぬか漬けも同じですが、美味しく発酵するためには寝かせることが大切です。

旅はあくまでもスタート地点であって、日常の”ケ”に帰ってからが本番です。

旅先で新しい素材と菌を調達して、日常という時間の中で、寝かされていた素材が味わい深くなり、ある日突然、想像を超えた「なにか」が自分の中で立ち現れてくるというのが旅という発酵活動ではないかと思います。

旅は、思想も醸します。

思想というのは、物事をどのように観るのか、同じものを見ている時にどの角度で見ていくのかということがその人の思想として表現されます。

今まで常識だったことが、旅を通して打ち砕かれることが幾度となく起きます。

その中で、自分を俯瞰して客観的に見ながら、どの視点で物事を考え、理解するのかという訓練が自然となされるのが旅だと思います。

自分の思想を醸し続けるためにも旅は必要ですし、時間をかけて寝かせることもまた大切なことだと思います。

旅を娯楽ではなく、発酵として捉えてみるとまた違った世界が見えてくるかもしれません。

千葉恵介

1996年岐阜県生まれ。思想家。
感謝経済という見返りを求めない贈与の循環を滑らかにする潤滑油として「ありがとう」を用いた経済を提唱し、共感する人たちと共に醸している。
また、感謝で繋がる恩贈りSNSであるmusubiを開発し、貨幣に頼らない経済を模索中。
参考 【ファンクラブ】一緒に「ありがとう」で成り立つ経済を創りませんか? - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)

今までの「発酵思想」
【発酵思想 vol.0】感謝経済を提唱する思想家・千葉恵介とは? 【発酵思想 Vol.1】発酵から何を学び、次世代に何を残すことができるのか? 【発酵思想 Vol.2】感謝経済を創るのではなく、なぜ醸すなのか? 【発酵思想 Vol.3】〜自分と他者の境界線〜自分を構成してる物は何か? 【発酵思想 Vol.4】“あわい”の哲学-「茶室」と「発酵」の共通性とは?- 【発酵思想 Vol.5】“あわい”の哲学 -時は無駄なり。無駄が人生を豊かにする-

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