「妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ないってどういうこと?」
「妊活中や妊娠初期で葉酸のことを気にして検索すると、すぐにサプリメントが出てくるけどサプリメント信じられない」
「葉酸をサプリメント以外から摂取する方法ってないの?」
今回は「妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない3つの理由とは?」ということをお伝えしていきます。
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その中で農業という産業の問題点や、健康食品業界の構造などを知りました。
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健康維持に対して、私が持つ結論は「お米と味噌汁があれば死なないし、健康維持にはそこに野菜があれば十分」ということです。
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現代社会は、「〇〇は体にいい」や「××は食べてはいけない」など白か黒で物事を決め過ぎています。
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そんな一つに「葉酸は食事じゃ足らないからサプリメントが必要」というような葉酸サプリ一択の考え方があるのではないかなと思います。
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サプリメントは最終的な選択肢であり、基本的には食事から栄養を摂ることが大事なのではないかなと思います。
目次
葉酸とは?
葉酸は水溶性のビタミンB群の一つで、新しい赤血球を作ったり、細胞分裂が活発に行われる妊娠初期には、DNAなどの合成に重要な働きをします。
葉酸には「⾷事性葉酸」と「合成葉酸」の2種類がある
葉酸と一言で言っても、「⾷事性葉酸」と「合成葉酸」の2種類があります。
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合成葉酸:サプリメントに含まれている葉酸のことで、モノグルタミン酸型葉酸と呼ばれる
食事性葉酸は、体内でポリグルタミン酸型葉酸から合成葉酸と同じモノグルタミン酸型葉酸に分解されなければなりません。
そのため、食事性葉酸の体内での吸収率は50%程度と言われています。
葉酸の一日摂取推奨量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、葉酸の一日摂取推奨量は以下のようになります。
一般成人 | 食事性葉酸240μg |
妊活中や妊娠初期 | 食事性葉酸240μg + 合成葉酸400μg(食事性葉酸なら800μg) |
妊娠初期以降 | 食事性葉酸240μg + 食事性葉酸240μg |
一般成人は、1日に葉酸を240μg摂取することが必要だと言われています。
これを葉酸が多く含まれるほうれん草で換算すると、1日に1/2袋食べる量にあたります。
ほうれんそう以外でも、緑の野菜(ブロッコリーや小松菜)などに葉酸は含まれているので、毎食、小鉢などを通して野菜を摂取していれば問題はないでしょう。
しかし妊活中や妊娠初期になるとその量は4倍になります。
同じくほうれん草で換算すると、1日2袋食べないといけない計算になります。
なぜそれだけ葉酸が必要かというと、妊活中や妊娠初期に葉酸が不足すると、神経管閉鎖障害を発症してしまう可能性があるからです。
妊活中や妊娠初期に必要な葉酸の摂取推奨量はとても多いので、摂取できないだろうということで、サプリメントに含まれる合成葉酸400μgで代わりに補うということになっています。
必ずしもサプリメントでなくてもいい可能性もある
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」を読んでいると興味深い文章があったので、引用します。
神経管閉鎖障害の発症予防に有効な赤血球中葉酸濃度を達成するために必要なサプリメントからの葉酸摂取量の増加は、狭義の葉酸として 400 µg/日であるとした先行研究がある。
そこで、神経管閉鎖障害発症の予防のために摂取が望まれる葉酸の量を、狭義の葉酸(サプリメントや食品中に強化される葉酸)として 400 µg/日とした。
ところで、食事性葉酸と神経管閉鎖障害との関連を調べた研究は観察研究がわずかに存在するものの、介入研究の報告は見いだせなかった。
しかし、理論的には食事性葉酸にも神経管閉鎖障害を予防する可能性が考えられる。
食事性葉酸と赤血球中葉酸濃度との関連を報告したメタ・アナリシスは、神経管閉鎖障害のリスクを最小限に抑えられるとされている赤血球中葉酸の最低濃度(1,050 nmol/L)を 450 µg/日以上の食事性葉酸摂取によって確保できると試算している。
しかしながら、これは間接的な知見であるため、今回は考慮しなかった。
つまり現段階では、神経管閉鎖障害に関して食事性葉酸による研究が不十分なため、現在公表している摂取推奨量は暫定的なものであるということです。
また複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析するメタ・アナリシスという分析方法では、神経管閉鎖障害のリスクを最小限に抑えられるには450 µg/日以上の食事性葉酸摂取によって確保できるという試算が上がっています。
今後の研究によって、妊活中や妊娠初期の女性が必要とする葉酸の一日摂取推奨量は変化するかもしれません。
つまり妊活中や妊娠をすると通常よりも多くの葉酸を必要とするが、その誤差は大きく、エビデンスがあって安全である最大量を推奨量として設定していることがわかります。
エビデンスは重要ではあるものの、絶対的なものではないので正しく理解することが重要です。

妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない3つの理由
葉酸についての基本的な話をした上で、「妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない3つの理由」についてお伝えします。
はじめに断っておきたいことは、葉酸サプリメントを否定するものではありません。
「お医者さんや厚生労働省が薦めているから正しい」と思い、何も疑わずに高額な葉酸サプリメント一択になってしまうあり方は正しいとは言えないとお伝えしたいです。
葉酸サプリメント以外の選択を模索する意味でも本記事が役に立つことを目指しています。
妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない理由は
- 葉酸はサプリメントじゃなくても摂取できるから
- サプリメントはどんな製法で作られているかわからないから
- 葉酸サプリメントの摂りすぎによる副作用のリスクがあるから
の3つです。
①葉酸はサプリメントじゃなくても摂取できるから
一つ目は、葉酸はサプリメントじゃなくても摂取できるからです。
現在、厚生労働省が出している妊活中や妊娠初期の葉酸の一日摂取推奨量は 「240μg + 合成葉酸400μg(食事性葉酸なら800μg)」ですが、この量を摂らないと生まれてくる子どもが神経管閉鎖障害になってしまうというわけではありません。
神経管閉鎖障害の発生率は10000人の出生に対して6人で、0.06%です。
妊活中や妊娠初期に葉酸を意識しない生活は問題がありますが、葉酸の一日摂取推奨量はあくまで基準値であるので、気にしすぎる必要もないと考えます。
とはいえ、「240μg + 合成葉酸400μg(食事性葉酸なら800μg)」という量を毎日摂取することが安心だと考えている人は、食事では相当努力しなければならないので、サプリメントを利用することをおすすめします。
以下は、「妊活中や妊娠初期でも葉酸を食事からなんとか摂取したい」と思っている方に向けてお伝えします。
葉酸に関するデータには幅が大きく、個人差がある
前述したように、妊活中に食事性葉酸は多く必要だけれどもその幅は450μg〜1040μgと差が大きいのも事実です。
また食事性葉酸の吸収率が50%であるというのもある一つの研究データであり、別の研究では25~81%と大きく幅を持っています。
つまり葉酸の一日摂取推奨量にも食事性葉酸の吸収率にも個人差があるということです。
食事性葉酸の吸収率を上げて450μg以上でなるべく1040μgに近い食生活を心がける
ではどのような食生活によって必要な葉酸を確保すればいいのかです。
それは、食事性葉酸の吸収率を上げるために、他のビタミン類を含む野菜を積極的に摂取して、450μg以上でなるべく1040μgに近い食生活を心がけることです。
葉酸の吸収には、亜鉛、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンB2、ビタミンB12の5つのビタミンやミネラルが深く関わっています。
これらのビタミンやミネラルを同時に摂取することにより、体内で葉酸を上手く働かせることができます。
亜鉛は高野豆腐、ビタミンCはブロッコリー、ビタミンB6は鶏肉、ビタミンB2は納豆、ビタミンB12は貝類に多く含まれていますし、それぞれに葉酸も含まれています。
またこれらのビタミン・ミネラルは葉酸が多く含まれたほうれん草やアスパラガスなどにも含まれています。
これらをうまく組み合わせて食事性葉酸を450μg摂取できるようにするのがサプリメントを使わずに必要な葉酸を体に取り入れる方法です。
長く書いてしまいましたが、ものすごくシンプルです。
葉酸の多い食べ物リストをみて、料理として毎日の食生活に可能な限り多く取り入れる心がけるだけです。
この方法を実践することで、少なくとも神経管閉鎖障害の発生率を0.06%よりも下げることは可能になります。
つまりサプリメントで葉酸を摂取するか、食べ物から摂取するかというのは、0.06%を0.01%にするか0.03%にするかのような話であるということを理解してください。
食事性葉酸は多い食べ物リスト
食べ物(100gあたり) | 食事性葉酸含有量 |
---|---|
ほうれん草 | 生:210μg、ゆで:110μg |
モロヘイヤ | 生:250μg、ゆで:67μg |
アスパラガス | 生:190μg、ゆで:180μg |
味付け海苔 | 1600μg |
わかめ | 440μg |
大豆 | 230μg |
納豆 | 120μg |
うなぎ | 380μg |
鶏レバー | 1300μg |
注意点が2点あります。
- 葉酸は水溶性ビタミンなので、茹でると水に溶け出して減ってしまう
- レバーは葉酸が多く含まれるが、過剰摂取は赤ちゃんの奇形発生リスクを高める
葉酸は茹でると水に溶け出して減ってしまうので、蒸す調理法や電子レンジを使って葉酸が逃げないようにするのも心がけてみましょう。
レバー類は葉酸が多く含まれる反面、摂りすぎは赤ちゃんの奇形発生リスクを高めるため、レバーに頼りすぎる葉酸摂取は控えましょう。
参考 妊娠時鉄欠乏性貧血における適切な食事指導に関する基礎的検討鉄補給のためのレバー過剰摂取の問題点②サプリメントはどんな製法で作られているかわからないから
妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない2つ目の理由は、どんな製法で作られているかわからないからです。
葉酸サプリメント問わず、サプリメントは製造方法や成分が非常に重要になってきます。
最近では100円ショップでもサプリメントが売られるようになっています。
しかし安すぎるサプリメントは海外の衛生状態がよくない工場で製造されている可能性や栄養素は表示できる最小限の機能性成分を入れて、残りは安全性がわからない添加物を使用しているケースもあります。
だからと言って、「価格が高いサプリメント=安全」というわけではないので、判断が難しいです。
安いサプリメントの危険性を述べると『高いほうが効きそう』という消費者の心理をついて、原価は低いのに販売価格を高くするようなサプリメントが現れます。
私たちも発酵食品を作るにあたって、製造業に参入してわかったことがあります。
発酵食品をどのようにお客さんに届けていくかを考えるときに、近いジャンルとしてサプリメント業界について調査したことがあります。
サプリメント業界を見ると、大部分のサプリメントの原価率は10%〜20%です。
販売してくれる小売業者や卸業者にマージン(手数料)を支払うことに加えて、サプリメントの場合、多額に広告宣伝費を必要とするので結果的に原価率は通常の商品よりも低くしなければならないのです。
なので販売価格は30日間で5000円のサプリメントであっても製品の原価は500円から1000円であるということです。
「原価が安い=危険」というわけではありませんが、サプリメントは注意して選ばなければなりません。
③葉酸サプリメントの摂りすぎによる副作用のリスクがあるから
妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない3つ目の理由は、葉酸の摂りすぎによる副作用のリスクがあるからです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、食事性葉酸の過剰摂取による健康障害の報告は存在しないことから耐容上限量を設定しないこととしています。
しかしサプリメントに含まれる合成葉酸の場合、過剰に摂取すればビタミン B12 の欠乏症である悪性貧血の患者さんに神経症状が発現したり、悪化したりした症例報告が多数存在していることから、健康障害を引き起こし得るため、耐容上限量を一日約1000μgと設定しています。
実際には1日5,000㎍を葉酸サプリメントから摂取しても副作用はないという研究報告に安全係数を考慮して1000μgとして設定されていることからもサプリメントによる副作用リスクが大きいとはいえません。
葉酸の種類 | 副作用リスク | 不足リスク |
---|---|---|
食事性葉酸 | なし | あり |
合成葉酸(サプリメント) | あり | なし |
前提として、妊娠中に葉酸不足で起こりうる神経管閉鎖障害の発生率は0.06%です。
この発生率0.06%をさらに下げるために葉酸をきちんと摂取するわけですが、食事性葉酸の場合は副作用リスクはないけれど、イメージとして発生率を0.04%程度までしか下げることができないが、サプリメントであれば副作用リスクはあるが、イメージとして発生率を0.02%まで下げることができるかもしれないという話です。
なので、最後はこれらの可能性からあなた自身がどう選択するかという問題になります。
お医者さんの言っていることが必ずしも正しいわけではないという話
ここまで妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない理由についてお伝えしてきました。
しかしやはりお医者さんに言われると信じてしまうという方も多くいると思います。
基本的にはお医者さんの言うことに従うことが大切ですが、必ずしもお医者さんの言っていることが正しいわけではないので、その事例を紹介します。
「妊娠中や授乳中の母親は、子どもにアレルゲンが移行しないようにアレルギー食品を食べないようにする」や「離乳食が始まったら、しばらくはアレルギー食品を食べさせないようにする」ということを医師や栄養士、保健師さんから指導されますが、それは誤りでした。
2015年にN Engl J Medで発表された「ピーナッツアレルギーのリスクのある乳児におけるピーナッツ消費の無作為化試験(Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy)」によると、ピーナッツを含有した食品を生後11か月になる前の乳児に与えることでアレルギー予防効果を得られる可能性があるということがわかりました。
つまり赤ちゃんが非常に早い段階で、あえてピーナッツを食べることでピーナッツアレルギーを予防できることがわかりました。
N Engl J Med(ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン)はインパクト・ファクターと呼ばれる権威度が70(2018年)を越える学術誌であり、さらに「2条件介入比較研究」と呼ばれる非常に価値の高い研究であることからも信頼度は高いです。
このように、かつてはどこのお医者さんに言ってもアレルギー食品を子どもや妊婦さんは避けるように言われていた内容が最終的には覆されてしまう場合もあるのです。
ゆえにお医者さんが述べている発言だからと言って必ずしも正しくということを忘れないでください。
参考 Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy【まとめ】妊活中や妊娠初期の葉酸との正しい付き合い方
最後に「妊活中や妊娠初期の葉酸との正しい付き合い方」についてお伝えします。
まず一番大切なことは、妊活中や妊娠初期は葉酸不足にならないように意識した生活習慣をすることです。
葉酸不足になると0.06%の確率で神経管閉鎖障害を持った子どもが生まれてきてしまうリスクがあります。
このリスクを避けるために葉酸摂取が必要ですが、前提は食事からしっかりと葉酸をはじめとしたビタミン・ミネラルを摂取することです。
その上で足りない量は①食事からとる方法と②サプリメントから摂る方法の2種類があります。
食事からとるの場合は推奨量である+800μgに到達できない可能性もありますが、研究によっては450 µg/日でも大丈夫であるという結果もあるので、その場合であれば葉酸を意識した食生活で実現可能です。
また食事からとるの場合は食事性葉酸の吸収率は50%程度といわれていますが、これも25~81%と誤差が大きいので、なるべく葉酸を効率よく吸収できるように葉酸吸収に大切な他のビタミン・ミネラルを意識した食生活が大切です。
さらに食事から葉酸をとることのメリットは、他の健康効果も期待できます。
例えば、ほうれん草には食物繊維なども含まれ、食物繊維は腸内環境を整えることで便秘の解消などにもつながります。
サプリメントから摂る方法は効率よく推奨量を摂取することができますが、副作用のリスクも少なからず存在します。
またサプリメントに月5000円程度かけることで得られる効果は葉酸不足の解消という1つの目的ですが、食事による葉酸の摂取は、金額は月に3000円から5000円ほどで便秘解消や免疫力アップなど他の健康効果も期待できます。
妊活中や妊娠初期に起こりうる栄養不足や不調などを一度でもサプリメントで補おうとすると、不足する栄養を全てサプリメントで補うというサプリメント頼りになりかねません。
そうなることで、副作用のリスク増大や毎月の支払いの増加なども起こりえます。
つまり総合的に考えると、葉酸を意識しながらも他の栄養も含んでいる野菜や果物、お肉、発酵食品などの食べ物から摂ることの方が良いと私たちは考えます。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は「妊活中や妊娠初期に葉酸サプリメントが必要ない3つの理由とは?」についてお伝えしました。
葉酸サプリメントは必要がないという風に伝えてきましたが、必ずしも否定しているわけではありません。
私たち消費者が知識を持って選択することが重要だと考えています。
サプリメントなどを開発販売しているメーカーさんも葉酸不足によって妊婦さんに健康被害があってはならないという想いで商品を開発していますが、弱肉強食の資本主義の中で自社の商品を多く販売しなければいけないという事実もあります。
そのために厚生労働省やあらゆる研究データを引用して自分たちの正しさを証明しています。
メーカーさんが話すことが間違えているというわけではありませんが、切り取った断片的な情報やデータであるということも忘れないでください。
葉酸サプリメントにおいては、前提に発症率0.06%という中での食事摂取がいいのかサプリメント摂取がいいのかという話です。
あくまで保険のような存在だと考えてもらうのがいいです。
その上で、どうするのかを考えてみてください。
私たちの記事が参考になれば幸いです。
発酵のやすくん
サプリメントをはじめとする成分を信じすぎてしまうことは、むしろ健康を害する可能性があるについて記事にしているので、ぜひそちらもご覧ください。
