「後発酵茶だけはちゃんと発酵している?」
「発酵しているお茶って何?」
「どこで飲まれたりしているの?」
今回はあまり馴染みのない「後発酵茶」について紹介します。
後発酵茶とはどんなものなのかから、種類や健康効果についてお伝えします。
ぜひ最後までご覧ください!
目次
後発酵茶とは?
後発酵茶とは、微生物で発酵させたお茶のことを言います。
まず発酵食品といえばの中に「お茶」は出てこないと思いますが、お茶にも「発酵」という言葉が使われています。
お茶に使われる「発酵」という言葉には、2つの意味があるんです。
初めにお茶に関する2つの発酵について説明します。
①微生物で発酵させたお茶が後発酵茶
後発酵茶は、乳酸菌や(コウジ)カビなどの微生物の発酵によって作られるお茶です。
中国やタイやミャンマーなどの東南アジアなどで飲まれておりますが、実は日本でも四国を中心とした特定の地域で飲まれています。
乳酸発酵によって、乳酸やシュウ酸が生成されるで酸味があることからお漬物のようなお茶と言われています。
②後発酵茶以外の発酵茶は酵素による酸化反応を発酵と呼んでいる
次に後発酵茶と呼ばれている以外の発酵茶について紹介します。
ここで言われている発酵というのは、微生物による発酵ではありません。
茶葉が本来持っている酸化酵素によって、茶葉の色が茶色になり、味や匂いが変わることを発酵と呼んでいます。
製法の名前 | 茶葉 |
---|---|
不発酵茶 | 緑茶・ほうじ茶 |
発酵茶 | 紅茶 |
半発酵茶 | 烏龍茶 |
私たちが普段から緑茶やほうじ茶は不発酵茶と言われ、酸化酵素による発酵も行わずに、加熱をします。
発酵茶と言われるものには、紅茶があります。
発酵茶は酸化酵素の活性を十分利用して製造したもので、湿度の高い部屋で充分に発酵させるため茶色になります。
もう一つ、半発酵茶というものがあり、烏龍茶がそれにあたります。
半発酵茶は、酸化酵素によって葉をしおれさせる工程はあるものの、途中で加熱して酸化酵素の活性を止めます。
そんなことから半発酵茶は不発酵茶と発酵茶の中間的なお茶といえます。
後発酵茶の種類
カビや乳酸菌などの微生物の発酵によって作られる後発酵茶の種類について発酵の製法ごとに分けて説明します。
後発酵茶と呼ばれるもにには、中国のプーアール茶が有名ですが、日本にも碁石茶や阿波晩茶などがあります。
製法は大きく分けて3種類あり、①カビだけの発酵、②乳酸菌だけの発酵、③カビと乳酸菌の二段階発酵です。
①カビによる好気性(=酸素がある環境)発酵
茶葉を収穫したあとに蒸して、茶葉にある酵素反応をとめます。
その後、酸素があるところで茶葉にカビを生やすして発酵させます。
プーアール茶
プーアール茶は、中国雲南省を原産地とした麹菌で作られた黒茶の後発酵茶です。
緑茶やウーロン茶にはない個性的な香りと風味があるので、苦手と感じる方もいるとのことです。
バタバタ茶
バタバタ茶は富山県で生産される後発酵茶です。
富山県での生産と言ってもとっても狭い範囲で、飲まれているのは、富山県下新川郡朝日町という新潟県との県境の町にある蛭谷(びるだん)地区です。
飲み方は、茶葉から黒茶を入れ、2本がくっついた状態の茶筅をお茶の中で振って、泡立った飲みます。
バタバタ茶の名前の由来は、茶筅をバタバタと左右に振る仕草からきていると言われています。
②乳酸菌による嫌気性(=酸素がない環境)発酵
次に乳酸菌による発酵をさせて作られる後発酵茶についてお伝えします。
阿波晩茶(あわばんちゃ)
阿波晩茶とは、徳島県那賀郡那賀町の相生地区や勝浦郡上勝町で作られている後発酵茶です。
阿波番茶の歴史は古く、弘法大師(空海)が伝えたのが起源とされています。
柔らかい新芽を発酵させると溶けてしまうため、地元に古くから自生しているヤマチャの新芽ではなく、夏まで育てた一番茶を7月中頃以降に摘みます。
その後茹でて、揉んで、10日~3週間ほど樽に漬け込むことで乳酸発酵させ、乾燥させたら完成です。
お茶の苦味成分を作っているカテキンやカフェインが少ないため、口当たりがいいのが特徴です。
ミャン
ミャンはタイとミャンマーの国境付近で飲まれている乳酸発酵させた後発酵茶です。
茶葉を収穫して蒸したあとに、乳酸菌発酵をさせることで作ります。
ミャンは「食べるお茶」と言われています。
③カビと乳酸菌の2段階発酵
次にカビと乳酸菌の2段階発酵によって作られ後発酵茶についてお伝えします。
カビで発酵させるプーアール茶や乳酸菌だけで発酵させるミャンなどどちらか一方であれば世界にも存在しますが、カビと乳酸菌による二段階発酵は日本にしかありません。
石鎚黒茶
石鎚黒茶は愛媛県西条市で作られている後発酵茶で、2018年に無形民俗文化財にも登録されています。
江戸時代から大正末期までは盛んに製造されていましたが、時代の変化に伴い生産農家が減少し一時は製造者が1軒にまでなりました。
その後、地元の方々の努力により文化が継承され、現在では3軒の製造者がいます。
石鎚黒茶は茶葉を収穫した後に蒸して、カビによる好気性発酵(酸素がある中での発酵)を行います。
その後よく揉んで、乳酸菌による嫌気性発酵(酸素がない中での発酵)をするという二段階発酵にて作られます。
碁石茶
碁石茶は高知県大豊町で生産されているカビと乳酸菌による二段階発酵をさせる後発酵茶です。
400年以上の歴史を持つ伝統製法によって作られており、かつては瀬戸内海の島々で生産される塩と交換するための特産物として生産されていました。
特産物であったことから昔は地元の人がいつも飲むお茶というよりかは高級品であったと言われいます。
製法は石鎚黒茶と近いです。
しかし石鎚黒茶は2段階目の乳酸発酵をさせる前に「揉み込み」の作業を行いますが、碁石茶は行わず、碁石茶の場合は乳酸発酵の漬け込みの後に「裁断」を行います。
裁断後はむしろに並べて天日干しをするのですが、その並べている様子が、黒い碁石を並べているように見えることから碁石茶と名がつけられたとされています。
その他の後発酵茶
最後にアジアで作られているその他の後発酵茶についてお伝えします。
ラペソー
ラペソーはミャンマーで作られている後発酵茶です。
後発酵茶の一種で漬物のような形態をしており、飲用ではなく副食などに用いられています。
ビルマ語でラペが「茶」、ソーが「湿った」であり、「湿ったお茶」という意味を持ちます。
竹筒酸茶
竹筒酸茶は、中国で作られ飲まれている後発酵茶です。
蒸した茶葉を竹筒の中に入れて、バナナの葉と土で蓋をしたのち、そのまま3ヵ月土の中に埋めて作るという不思議なお茶です。
後発酵茶の健康効果
後発酵茶の健康効果についてお伝えします。
正直いうと、研究はまだこれからというような状況です。
後発酵茶は味噌や納豆、ヨーグルトなどの一般的な発酵食品に比べて、生産地が限定的で、伝統的な側面が強いことから、医学的に見た機能効果などの研究結果は少ないです。
碁石茶にはラットでの実験研究があります。
その中では、血液中の資質が増えすぎてしまう高脂血症や動脈という血管が硬くなって詰まりやすくなる動脈硬化の抑制に効果があるという結果があります。
最後に後発酵茶の健康効果について、個人的な見解を述べて終わりにしたいと思います。
後発酵茶にはカビによる発酵と乳酸菌による発酵の2種類がありますが、どちらも菌によって元からあった物質が別の物質に変化していることは言えます。
この変化によって生み出された栄養素や物質などが私たちの体を喜ばせ元気にしていることは間違えないでしょう。
もう少し具体的に言えば、後発酵茶の茶葉に含まれる乳酸菌は私たちの腸内環境を整えている可能性が高いと考えます。
お茶のメリットとして、毎日飲み続けやすいことが挙げられると思いますので、後発酵茶を常備して、毎朝飲むようにすることも一つですね。
おわりに
いかがだったでしょうか?
今回は後発酵茶についてでしたが、マニアックではあるものの、知ると面白いですよね。
文化的にも、健康的にも必要な後発酵茶ですが、阿波晩茶や石鎚黒茶、碁石茶などのお茶は少子高齢化によって、後継者がいないことが課題になっています。
私たちも現地一つひとつに足を運んでみたいなと思いますが、ぜひ気になった方は旅行の際に足を運んでみてください。
私たちが知って、行動することで、文化伝承のきっかけになるかもしれません。
発酵のやすくん